JFN Association

全国FM放送協議会(JFN)

「JFN Association」は、JFNネットワーク、及び、加盟38社の各種活動情報(番組、イベント、営業展開等)を掲載しているWeb広報誌です。

JFN年末年始特別番組 「村上RADIO 年越しスペシャル~牛坂21(うしざか にじゅういち)」

 新型コロナウイルスの感染拡大から始まった緊急事態宣言、そして外出自粛など、激動の1年となった2020年。その2020年を締めくくり、新しい年を迎えるべく、初の生放送による『村上RADIO』年越し特別番組をお届けしました。ゲストに、村上さんと親交の深い、京都大学前総長で霊長類研究の第一人者・山極壽一さんと、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥さんを迎え、JFNリスナーにスペシャルな対談をお届けしました。そして、番組では、メッセージテーマとして「2020 年で一番よかったこと」を募集し、メッセージが採用された方には、村上春樹さんから特製ラジオネームが「お年玉」としてプレゼントされました。

■JFN年末年始特別番組
放送日時:2020年12月31日(木)23:00~2021年1月1日(金)1:00
タイトル:JFN年末年始特別番組 「村上RADIO 年越しスペシャル~牛坂21(うしざか にじゅういち)」

 コロナ禍でもあり、2020年は「これまでない経験したことのない厳しい年」だった。お祭り騒ぎではなく、誰もがじっくり聴ける年越し企画が求められた。それに相応しい方にマイクに向かって欲しい。ならばこの人しかいない。

 思い切って、村上春樹さんにお願いした。「『村上RADIO』を特別な時間に、初めての《生放送》でやりませんか?」。こうして『村上RADIO~牛坂21』が立ち上がった(タイトルは丑年生まれの春樹さんご自身がつけた)。

 音取材で京都に向かう。世界遺産の下鴨神社で僕らを迎えてくれたのは「風」だった。イヤフォンで増幅された風の音を聴くと、体が耳ごと京都の空に舞い上がっていく気持ちになった。

 「そうだ、番組冒頭にこの風の音を流し、春樹さんのデビュー小説『風の歌を聴け』の一節を朗読しよう」

 翌朝は東山の粟田口にある青蓮院門跡に。年またぎ部分で流す除夜の鐘の収録である。美しい庭に雪が舞い、許可を得て寺の鐘の前でマイクを構え、強く弱く、ご~んと鐘を()いた。だがそのたびにカラスが()くのには参った。オンエアは深夜。そんな時間にカラスはいない。鐘を撞くと空気の振動で雪が揺れながら降っていく。それは鐘の音が「見えた」瞬間だった。そんなことに感動しながら最後に撞くと、不思議なことにカラスが黙り、その音を放送に使うことにした。

 いよいよ大晦日、村上春樹さんがマイクに向かった。京都のスタジオと東京をデジタル回線で結び、そこから全国に繋ぐ。

 前半は村上春樹さんのマラソン仲間でもある京都大学 iPS細胞研究所所長の山中伸弥さん(ラジオネーム「AB型の伊勢海老」)と猛威を振るうコロナの話題を、年明けは世界的ゴリラ研究者、京都大学前総長にして日本学術会議前会長の山極壽一さん(ラジオネームは「ゴリラの背後霊」!)が出演、山極さんは問答無用で(学術会議会員の)任命拒否をした現政権に対し「ゴリラを見習ったほうがいい!」と一喝した。
※詳しくは『村上RADIO』番組HPに抄録を掲載されています。
 URL:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/toshikoshisp2020

 村上春樹さん、山中伸弥さん、山極壽一さんという世界的知性がJFNリスナーに語りかけた一夜だった。Twitter画面に「村上RADIOで年越しなんて。人生初のひとり年越しのお供には最高」とリスナーの文字が。

 「そうだよね。今年は一人で聴いてくれた人が随分いたんじゃないかな」と春樹さんが頷いた。各新聞ラテ欄に「歴史的! 初の生放送」と載り、番組を聴き漏らすまいと耳を傾けるリスナーには新聞のコラムニストもいた。

 「作家(村上春樹さん)は、自分の言葉を持たない政治家はブルースのコードが弾けないエリック・クラプトンのようだ、と語っていた。危機に指導者は、どんな言葉を発すべきなのか。新年早々、問われる局面だ」(日本経済新聞『春秋』2021年1月3日)

 特番が無事終り、おせちをつまみ、シャンパンを抜いてささやかにお祝いをした。
 山極先生が「新年だから、ゴリラ風にみんなで胸を叩きましょう。ゴリラのドラミングは威嚇じゃない。『さあ、みんなで前に進むぞ!』という掛け声なんです」。  春樹さんはもちろん、それぞれディスタンスをとりながらポコポコポコと胸を叩き、新しい年をお祝いした。

 αステーションの皆さん、優しいお気遣いとあたたかな歓迎、ありがとうございました。おかげさまで、出演者スタッフ一同、気持ち良くのびのびと放送することができました。

TOKYO FM ゼネラルプロデューサー 延江 浩

出演者の村上春樹氏(左奥)を囲み、ゲスト出演の山中伸弥氏(左前)、山極壽一氏(右前)、アシスタントの坂本美雨氏(右奥)。