第25回 総務責任者会議
2021年11月30日講演
テーマ:【一部】消費税インボイス制度・【二部】改正電子帳簿保存法
講師:伊藤聖氏
税理士法人おしうみ総合会計事務所 社員税理士
【一部】消費税インボイス制度
令和5年(2023年)10月1日から消費税のルールが新しくなります。
それが「インボイス制度」で、会社の損益に与える影響が高いので理解したうえで進めて頂きたいと思います。
「インボイス」の正式名称は「適格請求書」です。
この「インボイス」は誰でも発行できるものではなく、税務署へ申請し、「インボイス発行事業登録簿に登録された事業者」だけが発行できる請求書や領収書などの事です。
インボイスを発行できる事業所のことを「適格請求発行事業者」と呼び、「適格請求書」によって消費税の納付税額、還付税額を計算することが「インボイス制度」となるわけです。
まずは「インボイスの発行」についてご説明します。
インボイスの発行事業者は「登録制」です。
課税事業者であれば、税務署に登録申請ができます。
課税事業者が自動的に「適格請求書発行事業者」になるわけではありません。
また、適格請求書発行事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となった場合でも「免税事業者」にはならず、消費税及び地方消費税の申告義務が生じます。
「インボイス制度」の「登録申請」は、令和5年3月31日までに提出する必要があります。
申請を怠ってしますと取引先に迷惑をかけてしまいます。
登録申請は2021年10月1日からスタートしていて、「国税庁的確請求書発行事業者公表サイト」に於いて、登録された情報が公表されます。
但し、現在は登録番号での検索のみです。
「適格請求書発行事業者」として承認されると「登録番号」が割り振られます。
これは基本的には法人番号にTをつけたものですが、個人事業者には新たに番号が発行されます。
「適格請求書」には、現行の請求書に追加される事項があります。
①適格請求書発行事業者の登録番号②適用税率③消費税額
消費税額等の端数処理は1請求書当たり、税率ごとに1回づつです。
これらのことを踏まえて、現行のシステムで対応できるのか、改良が必要となる場合(例えば品目ごとに消費税を計算しているなど)には、見直しが必要です。
税込み記載方式をとるかどうかについては、会社の実情に依ります。
また業態によっては、「支払通知書」も請求書の代わりになります。
その場合には、相手先(支払先)の「登録番号」が必要になりますので、事前に相手先に登録番号を聞いておきましょう。
「免税事業者」との取引については、税法でこうした方が良い悪いはありません。 但し、免税事業者や未登録事業者への支払いの場合は、コスト増になることもあるので、会社としてどのような判断を下すかは経営判断となります。
【二部】改正電子帳簿保存法
電子帳簿保存法の改正について改めて重要な点をお話します。
- 電子帳簿保存の要件緩和は、来年、令和4年1月1日よりスタートします。
まずは従来必要であった、税務署長への事前承認申請が不要になります。会社の電子帳簿保存ができるタイミングから始めて構いません。
また届け出が必要ですが、「優良な電子帳簿」に該当すると過少申告加算税を5%軽減してくれるメリットが出てきます。電子帳簿保存で享受できるメリットです。管理部門としても会社に提案しやすくなるかもしれません。 - スキャナ保存の要件緩和は、紙の領収書などをスキャナ保存する場合、税務署長への事前申請が不要になります。また、スキャンデータに改ざんがあった場合の重加算税率が通常の重加算税率にプラス10%が加算されます。
- 電子取引の取引情報の保存義務化と要件緩和+データ改ざんの重加算税過重措置は、全ての会社に義務化されます。①②は会社の判断に依って実施するかしないかですが、この「電子取引の取引情報の保存」は義務です。今まではデータで貰ったものはデータで保存したり、代行措置としてプリントアウトして紙で保存したりしていましたが、今後はデータで貰ったものはデータ保存のみとなります。まずは自社の電子取引にどのようなものがあるのか、確認しておくことが必要です。
注意しなければならないのは、例えば、金額などが含まれたLINEやチャット、メールも取引のやり取りが含まれるのであれば、電子取引となり、データのまま保存していくことになります。その場合の保存は、一定の改ざん防止措置を施すことが必要です。後に税務署などに提示を要請された際、すぐに検索できるようにしておかなければなりません。管理部門としては、各担当者のやりとりの履歴を残しておくのは社員を守るためにも必要だと思いますので、注意してください。