第27回 総務責任者会議<第一部>
2023.11.28(火)開催
●講演:インボイス制度と電子帳簿保存の課題と対応
講師:税理士法人おしうみ総合会計事務所 社員税理士 伊藤聖氏
JFN加盟社の全国の総務責任者へのアンケートで最も関心の高かった、インボイス制度と、間もなく改正法が施行される電子帳簿保存について、昨年に引き続き、伊藤税理士に講演していただきました。
■インボイス制度のおさらい
【インボイスのパターン】
●適格請求書(①)と適格簡易請求書(②)
違いは「宛名」があれば①、レシートで片付くものは②になる。
税率ごとに区分した消費税額または適用税率、どちらかの記載があれば良い。
●修正した適格請求書(インボイス)
例えば、登録番号のない請求書が来た場合、登録番号を通知してもらえれば要件を満たすので、インボイスとして認められる。税率の記載がなければ税率の記載をしてもらうなど、足りない箇所だけ加えれば問題なし。
●返還適格請求書(返還インボイス)※通常と逆。記載事項の基本は一緒。
値引き・返品・割り戻しが行われた場合に、売手→買手に交付が必要。
●仕入明細書による対応
通常、インボイスは売手側が発行するが、業界的に多いと考えられるのが、支払う側が発行する「仕入明細書」だと思われる。相手側(売手)の登録番号と確認が必要。
【複数書類によるインボイス対応】 ・ 請求書と納品書で記載事項を満たす場合など。 ・ 納品書がインボイスの場合…納品書は保管すること。 ★納品書は物が動いた証拠。国税関係書類でもある。
【端数処理】 ・ 請求は税抜きで計算しているが、実費精算の交通費などは税込みで書かれている。そうなると税抜きと税込みのインボイスが混在することになってしまう。その場合、全てを税込み表示にして「内、消費税○○円」と明記。 ・ 税率ごとに個々の商品に係る「税抜金額」を合計し、8%対象、10%対象で消費税額を計算。この端数処理はインボイス一回につき、税率ごとに、それぞれ一回のみ認められる。 ・ インボイスに記載されている個々の商品ごとに消費税額などを計算し、端数処理を行い、その合計額を「税率ごとに区分した消費税額等」として記載することは認められていない。
【立替払いの保存の特例】
割り勘清算した時に領収書が貰えない。そうした場合、この特例を適用することになる。一旦領収書を受け取った所(者)が立替清算書を相手に交付し、領収書の写しも相手に渡すこととなる。
【帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能】
・ 30,000円未満の公共交通機関(船、バス、鉄道)…一般的に必要な交通費の範囲内なら、従業員の場合、出張旅費特例でインボイスは不要。従業員の通勤交通費(定期代)も不要。
※出張旅費(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)…所得税法上給与とされない範囲と同じ
※出張先で利用したタクシーの領収書も提出不要
※海外のホテル予約サイト等への支払いは、従業員の立替払いならOK
(会社から支払うとインボイス対応が必要)
【経過措置】 ・ 令和5年10月1日~令和8年9月30日…控除可能割合は仕入税額相当額の80% ・ 令和8年10月1日~令和11年9月30日…控除可能割合は仕入税額相当額の50% この経過措置の適用を受けるには、経過措置の適用を受ける旨が記載された帳簿及び請求書等の保存が必要。
【価格交渉で問題とされるケース】 ① 取引対価の引き下げ…仕入側の都合のみで著しく低い価格を設定する ② 商品・役務の成果物の受領拒否、返品…仕入れ先が免税事業者であることを理由に商品の受領を拒否する ③ 協賛金等の負担の要請等…取引の相手に取引価格とは別に協賛金や販売足品費などの名目で負担を要請する ④ 購入・利用強制…取引価格の据え置きを受け入れる代わりに、当該取引以外の商品等の購入を要請する ⑤ 取引の停止…免税事業者である仕入れ先に対して、一方的に著しく低い取引価格を設定し、それに応じない相手との取引を停止した場合 ⑥ 登録事業者となるよう要請等…課税事業者になるよう要請するに留まらず、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、取引を打ち切るなど一方的に通告すること
■電子帳簿保存 【体系】 ① 電子帳簿の電子保存(任意)…電子で作成した会計帳簿の電子保存 ② スキャナ保存(任意)…紙で受領した請求書や領収書を電子データで保存(紙での保存は不要) ③ 電子取引の電子保存(2024年1月強制)…メールやWEBダウンロードにより受領した請求書、領収書を電子データで保存(紙での保存は不可)
【電子取引に係る保存要件】 ◎真実性の確保(改ざん防止措置) ・ タイムスタンプの付与 ★メール等で受領したデータを、訂正・削除等の履歴が残るクラウドにアップードするだけではNG(タイムスタンプの付与に当たらず、改ざん防止の担保にならないため) ⇒事務処理規程を定め、規程に沿った運用を行えばOK ・ 国税庁HPを参考に規程を作成すれば充分 ・ 見積り依頼や見積書、納品書も国税関係書類のため、原則、保存の方向で ◎可視性の確保 ・ 関係書類の備え付け…取扱説明書など ・ 見読性の確保…プリンタやディスプレイなどを備え付ける ・ 検索機能の確保…データをサーバ等に保存するだけではNG ⇒取引先、取引年月日、金額のうち2つ以上の任意の組合せで、範囲指定して検索できることが必要 ⇒リスト(EXCEL等)を作成して検索できるようにするならOK
【何をすべきか?】 ① 社内で制度内容の周知→全ての取引担当者に関わる事柄 ② 電子取引する書類の種類、保存形態別に社内全体の洗い出し ③ 電子取引について、どのように電子データを要件に従って保存を行うかを検討し、社内での統一的なマニュアルを作成 ④ 生産性の向上に資するようなワークフローの見直し ⑤ 電子インボイス活用を前提としたインボイスに関する業務の流れもワークフローに織り込む(必要に応じて検討) ⑥ コスト・時間に余裕があればスキャナ保存、電子帳簿保存も視野に検討