第28回 総務責任者会議
2024年12月5日開催
◆講演:私たち、総務が、会社の『未来』を創るのだ!
講師:「月刊総務」代表取締役 豊田健一氏
コロナ禍を経て働く場の多様化が求められ、人手不足への対応も課題となる中、総務部門の重要性が高まっています。今年のJFN総務責任者会議では、国内唯一の総務部門専門誌「月刊総務」の豊田代表を招き、講演していただきました。リアルで26名、リモートで14名、合計37社40名の出席者からは、「豊田代表のお話を聞いてモチベーションが上がった!」との声も多数聞かれました。
●はじめに
「総務」とは、幅広く「管理部門」と捉えて頂ければよい。
「イケてる総務」と「従来型の総務」の違いは、総務の仕事をどう捉えているか?可能性を見出し自身も成長できると前向きに捉えれば、かなりのことができるのも総務。きょうは「総務が変われば会社が変わる」をテーマに話をしよう。
●日本の会社の課題
人がいない、人が減る、人手不足倒産…が叫ばれている時代。採用し、定着させ、活躍してもらうことは、重要な経営課題。いかにして選ばれる会社になるか?働く場の多様性を示さなければ、人は集まりにくい。給与と休みを増やし従業員満足度を上げるだけでは業績に貢献しない。いかに従業員とのエンゲージメントを高めて生産性を上げるかが重要。
●人的資本経営
ヒト、モノ、カネ、情報…企業の資産の中で、最も伸びしろがあるのが「ヒト」。
<参考>一橋大学・伊藤邦雄氏による人材版伊藤レポートより
企業側が適切な機会や環境を提供すれば、人材価値は上昇し、放置すれば価値が縮減してしまう。人材の潜在力を見出し、活かし、育成することが今まさに求められている。適切な環境を提供することは、適切な働く場の提供である。
●人的資本経営は総務が重要
人事が「人を磨き」人の能力を高める。
総務が「場を磨き」人の成果を高める。
働く場(=舞台)が磨かれていないと人材教育も意味をなさない。
働く場は社員が輝く舞台。舞台が変われば、役者の演じ方も変わる。
舞台を作るのは総務。だから、「総務が変われば会社が変わる」のだ!
●戦略総務
大事なのは、今、何をしているかより、その先に何を描いているかである。総務の仕事には物品の手配もあるが、モノを使う先には必ずコトがある。モノを手配するにあたり「そもそも何がしたかったのか」まで遡れることが重要。
そして当事者意識を持つこと。これは私の担当です。私がやらねば誰がやるのか。正に「This is MY building(FMクレド15箇条より)」である。
総務の役割は多岐にわたるが、「何でもやる」のではなく「何でもできる」と捉えたい。社員の働く場づくりを司る総務が変われば、会社の未来は必ず変わる。管理部門の一人ひとりが自ら考えて会社を変えることが、「戦略総務」なのだ。
●不確実な時代を乗り越える
不確実性の時代だからこそ、総務は情報収集が重要になる。変化を先取りして乗り越えれば適者生存となり、社会の変化を機会として利用し、会社を変えるという考え方もある。コロナ禍を経てリモートワークが普及したことも、その一例。
未体験の仕事が増加するため、ノウハウよりも「Know Who(知っている人を知っている)」が総務の武器になる。
●総務の客は誰か
総務のオーナーは会社の経営層だが、総務のユーザーは社員。社員の目線に立ち、横に並んで同じ景色を見る。現場社員と同じ方向を見据え、社員の顧客に迫れる総務は強い。ゆえに現場を経験した人が総務を担当することは、会社の力になり、変革の原動力となる。
●ぶらぶら総務
「MBWA=マネジメント・バイ・ウオーキング・アラウンド」。現場に足を向け、現場を歩きながら、マネジメントしていく。要望を聞かずに様々な施策を行っても、ハレーションを生むだけで使われないことも。現場の話を聞きながら、総務の考えも伝え歩けば、徐々に刷り込まれていく。「知る」と同時に「知られる」ことも大事で、日ごろから情報発信しておけば、施策も受け容れられやすい。
●チェンジマネジメント、2・6・2の法則
流行にすぐに飛びつく上位2割、それをフォローする真ん中の6割、後ろの2割は反対派。社内の施策等で、後ろの2割と正面から戦っても心が折れるだけなので、この層は相手にせず、まず上位2割に向けて情報発信し、真ん中の6割が追随することを狙う方が精神衛生上良い。
●売れる総務
新たな施策、サービス、ルール等の導入時、まず総務が、最初に実践し、効果検証する「ファーストペンギン」になるべし。体験をもって伝えれば熱量が違う。そして社内営業で「What(何を目指すのか)」と「Why(それはなぜか)」をしっかり浸透させれば、腹落ちしてもらいやすい。
●理想なくして改善なし
総務の仕事は、問題を見つけ、改善すること。「問題」とは、こうありたいと思う姿(理想)と現実のギャップであり、それを解決するための具体的な取り組みが「課題」である。課題を解決して実現すべきことが「目標」。したがって、掲げる「理想」がないと、「問題」を見つけることができない。管理部門として、どのような働く場を作りたいのか、どのような社内風土を醸成したいのか、あるべき姿を描く。「ぶらぶら総務」で社内を見れば、現状が見え、改善のネタも見えてくる。
●総務の立ち位置って?
月刊総務が行った総務担当者アンケートによると、総務の現状について、「何でも屋」「他部署のサポート役」「縁の下の力持ち」が回答の上位に並んでいるが、これが良いのか悪いのかは、解釈のしかた次第である。
・何でも屋 ⇒ 何でもやるのではなく、何でもできる
・他部署のサポート役 ⇒ 社内の全部署に影響力が及ぶ
・縁の下の力持ち ⇒ 役者(社員)が演じる舞台(働く場)を司る
このように考えると、総務という仕事は、とても良いポジションだということが分かる。
●おわりに
個々のタスクへの精通ではなく、総務の仕事を広くとらえた「分野」のプロになること。または、社内のあらゆる業務を対象にする「改善」のプロになることが、総務の仕事の目指すべき方向だろう。自身の汎用性を高めて、他社でも通用する実力をもって社内でがんばる、というのが良いのではないか。
総務業務を前向きに捉え、総務が変われば、会社が変わる!のである。
豊田健一様、力づけられる貴重なお話をありがとうございました。
いつか月刊総務に取材していただけるような、そんな仕事ぶりを目指したいと、出席者それぞれの心に火が点る思いがしました。